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バックパッカーの旅Ⅰ(東京~アテネ)

バックパッカーの旅Ⅰ(東京~アテネ)

"Fotis House"にお引越し

                 ≪十月二十六日≫  ―壱―


   南京虫の痒みは何とか治まったのだが、かまれた痕はまだ点々と残っ

ている。

政雄に起こされて、目が覚める。

新保君と千春君はもうすでに、ロンドンに飛び立ったようだ。

時計を見ると、午前九時をさしている。

政雄と若狭君も今日日本へ発つ予定とか。

残るは、小平君とテッシンに俺の三人になってしまう。

   後一ヶ月は、アテネに留まるような予感がして・・・どこかもっと、

適当な宿を探そうと、この楽しかったジョセフ・ハウスを出ることに決め

た。

会長一家もアテネでの滞在は、後二日ぐらいと言うことで、玲子ちゃんもそ

の間、このジョセフ・ハウスに留まるとか。

    風さえなければいいのだが・・・。

強風が吹くと、午前中晴れてても、午後には急に雲が増え、天候が怪しくな

ってくる。

そんな中、重い荷物を背負って、久方ぶりの移動開始だ。

ひとまず、プラカ地区に仮の宿を見つけて、重い荷物を降ろし、身軽になっ

たところで、市内中の安宿を見て歩くことにした。

   まず、”Jimmy's House”を覗く。

女の子が非常に多く、なかなか感じのいい所なのだが、いつまでたってもオ

ーナーが出てこない。

気分を害して、断念する。

二番目に訪れた所が、”Fotis House”。

市内中を見て回るはずが、二軒目で立ち止まってしまった。

ここなら、いき付けのタベルナも近いし、”美智子”も近い。

プラカ地区真っ只中なのが、この”Fotis House”。

  通された部屋は、四人のドミトリー(相部屋)で、一人60DR(480円)。

すでに二人の先客が居て、一人はうら若き女性だった。

ドアを開けてすぐ右側に、二段ベッドが二つ並んでいるだけの狭い部屋。

奥のベッドの下に女性が居る。

上段は空いている。

ドアに近い方のベッドの上に毛唐(男性)が居て、俺は毛唐のしたに決まっ

た。

別に彼女の上でも良いのだが、彼女のすぐ横だと言うことで気に入ったので

オーナーに従った。

俺が来るまでは彼女、見知らぬ男と二人っきりだったのかな?

外人女性のしたたかさに驚かされる。

部屋は狭く、二つの二段ベッドがあると、ほとんどゆっくり出来る空間が存

在しないほど狭い。

ベッドの間に、人が立つとその横を通るのに不都合が出るほどだ。

窓はなく、ほとんど密室状態。

それにしても、ラッキーな宿を見つけたもんだ。


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